いろいろ難しい話はあとから読んでいただくとして・・・まずはこちらの動画をご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=LryaArzdY58
動画の字幕でネタバレしていますが、このクリスタルボウルは「純正律」のフルセット(7つ+1つ)です。一般的な(平均律の)フルセットより、和音が美しいような気がしませんか?
では、ここから難しい話です。
クリスタルボウルにはひとつずつ音階が決められています。そして、「ドレミファソラシ」の7つの音階のセット(7つのボウル)を「フルセット」と呼び、クリスタルボウル奏者の中では「フルセットを手に入れる」ことがひとつの到達点のようになっています。
一般的なクリスタルボウルでは、この「ドレミファソラシ」を「平均律」という考え方に基づいて、1オクターブを12で割って均等に割り振ることによって各音階の音程を決めています。
しかし・・・平均律には「和音が濁って聞こえてしまう」というデメリットがあります(もちろん、メリットもあるので広く使われています)。
平均律とは異なる考え方で「純正律」というものがあります。純正律は「和音が美しい」というメリットがあります。そのかわり、複雑な曲を演奏するのには向いていません。
一番低い音を「LOW-A(低いラ」にした場合、純正律に基づいた各音階は以下のような音程になります。
- LOW-A +-0(基準の音)
- LOW-B +1(基準の音の9/8倍)
- C# -14(基準の音の5/4倍)
- D -4(基準の音の4/3倍)
- E +2(基準の音の3/2倍)
- F# -16(基準の音の5/3倍)
- G# -14(基準の音の15/8倍)
- A +-0(基準の音の2倍)
そして、今回試奏している純正律フルセットのサイズとピッチは・・・
- 8インチ:LOW-A +5(誤差+5、絶対音!)
- 8インチ:LOW-B +6(誤差+5、絶対音!)
- 7インチ:C# +5(誤差 +19)
- 6.5インチ:D -4(誤差 0、絶対音!)
- 7インチ:E4 -9(誤差 +11)
- 6インチ:F# -20(誤差 -4、絶対音!)
- 6インチ:G# -16(誤差 -2、絶対音!)
- 5.5インチ:A +-0(誤差 0、絶対音!)
・・・というわけで、ほぼ絶対音で入れ子(重ねて収納)できる奇跡的な組み合わせとなっています。「C#」は19セントのズレ、「E」は11セントのズレなのですべてが絶対音(ズレが+-10以内)とは呼べませんが、それでもここまでのセットは滅多にありません。
より幅広い音を演奏できるように、7つのフルセットではなく8つのセットとしているため、お値段は少し高めです。
気になる!という方は、以下のリンクからご確認ください。
私のフルセットはダメだったの?という方へ
「平均律の和音は濁る。純正律の和音は美しい」ということで・・・「私が持っているフルセットはダメなセットなの?」と心配になる方へ・・・
心配は不要です。
クリスタルボウルの音にはほわ〜んという「ゆらぎ」と「複雑な倍音」があり、明確なメロディを演奏する楽器ではありません。そのため、ぶっちゃけていえば「平均律だから美しい」とか「純正律だから美しい」という世界のものではありません。クリスタルボウルは+-10セント以内のズレなら「絶対音」と呼ぶけれど、本来なら1セントでもピッチがズレている時点で平均律も純正律も関係ないかもしれません。
今回の純正律セットは「強いこだわりを持っている方」への「提案」です。
クリスタルボウルは楽器です。それも、電子楽器のようにボタンを押せば誰でも同じ音を鳴らせるものではなく、とても繊細な生演奏の楽器です。
どれだけ高価なバイオリンでも、素人が弾くとムチャクチャな音になるように、どれだけ安いバイオリンでも、熟練者が弾くと美しい音になるように、何より大切なのは「演奏技術」です。
より心地よい未来を、それぞれの知識と技術とアイデア、それぞれの楽器と世界で作れるように努力を続けていきましょう。