イベントのときに質問いただいて、解答に困ったシリーズ。
「クリスタルボウルって海外だと医療機関でも使われているんですよね?」について書いてみます。
そ、そうですね…病院内のイベントとしての演奏や、医師のライセンスを持っている方による演奏というのはありますが…積極的な治療方法として広く使われているとはまだまだ言えないかなと…。
たとえば、日本の厚生労働省に相当する「アメリカ保健福祉省(Department of Health and Human Services、HHS)」が「クリスタルボウルを治療に取り入れましょう」というような通達をしている…なんてことは一切ありません。あくまで個人の判断として、補完的に使われているというのが現実です。
私もこれまでにメンタルクリニック、総合病院、お寺、放課後等デイサービス、養護学校などで演奏をさせていただいていますが、だからといって
「日本では医療、宗教、教育の現場でクリスタルボウルが取り入れられている」と表現するのは誇張し過ぎに感じます。
また、アメリカ国立医学図書館が管理し、生命科学と医学の学術論文が検索できるサイト「PubMed」にも、クリスタルボウルが医学的に効果があるという論文は見つけられませんでした。
唯一あったのは「クリスタルシンギングボウルの演奏で慢性脊髄痛患者の疼痛緩和は確認できなかった」とされるもの…おい、誰がどんな演奏したんやソレ…(クリスタルボウルの体験は奏者によって大きく変わります)。
「マインドフルネスは有効である」という論文はたくさんあります。マインドフルネスは「こうやったらいいよね」「これはダメだよね」という技法が標準化されているから、インストラクターごとの体験の差が小さいです。
でも、クリスタルボウルは奏者によって演奏の内容が大きく違います。マインドフルネスほど標準化できていません。そして、演奏の内容によっては心地よいグッド・トリップではなく、精神的・身体的苦痛を伴うバッド・トリップになる恐れがあるので…
私たち奏者はもっともっと真摯に、慎重に、敬意を払いながら音の世界を探求すべきだと考えています。「海外だと医療機関でも使われてますんで」というような気持ちだと、努力を忘れてしまうかもしれません。
演奏を体験する皆様も、クリスタルボウルはすべてが癒やしという認識ではなく、自分が心地よいと感じる演奏(奏者)を探して、日常を大切にしつつ、もうひとつの日常の感覚として楽しんでいただければと思います。
将来の夢としては…
- たくさんの奏者がそれぞれの理想の演奏を目指す ←いまここ
- だんだん、それぞれの「ジャンル」ができてくる
- ジャンルごとに演奏のスタイルが標準化される
- そのジャンルであれば、奏者ごとの体験の差が小さくなる
- そのジャンルの体験についての実験・研究ができる
- 世間に認められる
がんばりましょう!