クリスタルボウルを知っている音楽家の方と、「クリスタルボウルの音ってどうやればスピーカーで上手に再現できるんでしょうねぇ」というお話になることがあります。
そして、いつも「それはムリですねぇ」という結論になってしまいます。
クリスタルボウルというのは本当に不思議な楽器です。円形をしていて、その円全体から音を発します。たとえば、人間の声は口から発せられると前方へ音が進みます。後ろ側にいる人はあまり声が聞こえません。ボウルにはそのような「音の方向(指向性)」がなく、円形に均等に音が進むので、どこにいても・どの方角からでも同じように音を受け取ることができます。
音楽を聞くためのスピーカーは基本的に前方へ音を届けるように作られています。スピーカーの前方と後方だと音の感じが違います。これはクリスタルボウルの音の発し方とはまったく違う状態です。
「どの場所にいても同じように音で聞こえる」という指向性がないスピーカー「無指向性スピーカー」もありますが、クリスタルボウルの場合はこの無指向性スピーカーがボウルの数だけ(7つとか8つとか)ある感じです。
「クリスタルボウルの音の高さや低さを再現できるスピーカーはあっても、クリスタルボウルの音の方向性を(すべて)再現できるスピーカーは(現実的に)存在しない」
という感じです。
※マルチチャンネルで録音したボウルの音を指向性のないスピーカーを複数使ってマルチチャンネルで再生すれば再現できるかもしれませんが、一般家庭では非常に困難でしょう。
いままで音楽配信サービスやYouTubeでクリスタルボウルの音を聞いたことがある方でも、生演奏を聞くと「まったく違った!」と驚かれるのは、この「音の発し方」の違いが理由のひとつだと思います。どこから音が聞こえているのか分からない、音に包み込まれるような感覚は生演奏ならではの体験です。
音楽配信サービスやYouTubeでクリスタルボウルの音を再現できないことを残念に感じて、どうにか上手な方法はないかと考えていた時期もありましたが、最近は「ま、いっか」という気持ちになっています。
そのかわり、なるべくたくさんの回数・たくさんの場所で演奏をしています。
クリスタルボウルの音に包まれる特別な体験、自宅では再現できない音の世界をぜひお気軽にお楽しみください!