3月20日(金)から二泊三日でクリスタルボウルを用いたリトリートイベントを東京の離島・式根島で行いました。その日々をレポートしてみます。
イントロ
実はこのイベント、かなりギリギリまで参加者が確定していませんでした。日頃開催している室内イベントは常に満員御礼になっていますが(ありがとうございます)、やはり二泊三日という長丁場であること、船の中で寝ながら行くということなど、なかなかハードルが高かった様子。情報提供が後手後手に回ってしまったことは反省するしかないし、このハードルを乗り越えて参加してくれた方々には、絶対おもしろい体験を届けるんだという強い責任感も生まれました(次からはもっと分かりやすくします)。
今回の参加者は全6名。クリスタルボウルは初体験という方も2名おりました。
3月20日(金)
離島ゆえにお天気も心配でしたが、雨雲も前日でいなくなり、ほとんど風のない穏やかな夜。これなら船もあんまり揺れなさそうです。集合場所の竹芝桟橋は、シーズンオフと思えないほどの人で溢れていました。
22時の出航。皆さん、そろそろ集まってくれるかな・・・と思っていたら、
「少し遅れていて30分ごろの到着です」
あ、全然大丈夫ですよー。
「俺らは40分ごろにつきますー」
ちょ、ちょっと急いでください!
「会社をやっと出ました。50分ごろになりそうです」
それはマズイよ!!!!! 船が出るよ!!!!!!!
・・・というわけで、かなりギリギリな時間に全員が集合し、スタッフにせかされながらの乗船。ドタバタと旅が始まりました。
船の中ではボウルを演奏するわけでもなく、のんびりとした時間。甲板に出て夜景を眺めてみたり、コインシャワーを使ってみたり、お菓子をひろげて談笑したり。船には、電車や飛行機とはまったく違った、自由でおおらかなリズムがあります。
100円で「貸し毛布」を借りて、ぐっすりと眠りました。完全に雑魚寝の様相ですが。
旅のメモ
- 二等船室の場合、アイマスクや耳栓があると睡眠が快適に
- 100円の貸し毛布のほか、500円で「貸し布団」があったけど、毛布5枚分の値段を払うほどの魅力はない様子
- 消灯時間は23時半ごろ。よくも悪くも、船内は談笑スペースが少ないので、船内で合コンしたり飲み会するのは遠慮いただきたいところ
3月21日(土)
大島、利島、新島を過ぎ、朝の9時過ぎに目的地である式根島へ到着。ちょっと雲が出ているけど、雨の心配はなさそうです。
そのまま本日のお宿へ移動。荷物を下ろして、さっそく島内探検へ出発です。
歩きながら道ばたに自生している野草・アシタバを摘んでいきます。さすが新緑の季節、たくさんの量がありました。伊豆七島はほぼ全部行きましたが、アシタバが自生している数(勝手に採れる数)は式根島が一番だと思います。今日の夕食はアシタバ祭りになりそうです。
途中、お弁当がおいしい「みやとら」さんで「たたき丸」というファーストフード?を売っていたので購入してみました。よく、コンビニのレジ脇で唐揚げとかが並んでいる茶色いケースに入った、アツアツ系フードです。
・・・これが!まさかの中身がご飯!!!!!(いや、外にも写真あったんだけどね)
ひとつ200円って値段はかなり強気だなーと思っていたけど、たしかなボリューム感。
そしてなぜか「くさや入り」をチョイスしたために、間違いのないスカム感あふれる一粒でした。
そうそう、今回のリトリートは前回(8年前)とは異なり、飲食の制限は設けませんでした。ノンアルコール・ノンスモークだけは当然だけど、やっぱり島に来たら島のものを食べたいなと。リトリートというタテマエであればVEGANに徹するべきかもだけど、それにこだわるあまりに、外国で作られた加工食品を持ち込んだり、逆に頭デッカチになって、本来のリトリートの趣旨である「肉体と精神のバランスを回復させる」ことから遠のいてしまうと本末転倒です。さすがに焼き肉をジュージューやったりはしなかったけど、島の魚はOKとしていました。
そして、村一番のスーパー「おくむら」で、生玉子を購入。これで天然の温泉玉子を作る計画です。そう、いつどこで手に入れたのかさっぱり覚えていないけれど、私は玉子を入れるのにちょうどいいメッシュのナイロン袋を持っています(たぶん、本来は釣りか農業用です)。この中に玉子を入れて、式根島の露天風呂「松ヶ下温泉 雅湯」の熱湯がドバドバと出ているところへ沈めておくと・・・1時間程度で天然の温泉玉子が完成するのでした。
この温泉玉子、観光客で作り方に気づいている人はほとんどいないため、まわりに振る舞うと喜ばれます。コストも安いしね。
てくてく歩いて海岸沿いへ到着。ここで少し早いお昼ご飯を食べて、ゆるやかな自由行動へ。温泉へ入りたい人は温泉へ、釣りをしたい人は釣りへ、散策したい人は散策へ。式根島は歩いてまわれるほどの小さな島なので、団体行動も単独行動もとてもしやすいです。
私は温泉コースへ。地面を鉈(ナタ)で割ったような中にある「地鉈温泉」へと足を運びます。山を登り、次に階段で深く降りていくと・・・
濃い鉄分で赤茶け、天然の湯の花が漂う名湯が海のそばに現れました。
地鉈温泉は本当に天然なので、源泉のポイントへ流れ込んでくる海水によって湯温が変わり、どこが適温なのか分からないのです。ましてや今回は新月(大潮)の旅。潮の満ち引きで大きく湯温が変わります。
幸いにも、ちょっとぬるめの適温な湯壺があったけど、そこ以外はものすごい熱湯風呂になっていました。
湯に浸かり、体を温めます。耳に聞こえるのは波の音だけ。目の前には鉈で割ったような崖の景色。ここは、どこなんだろう。何なんだろう。広大な海の中に作られた、本当に偶然の温泉。そんなところへ来ている、本当に偶然の人生で出会った仲間たち。湯話に強い音はいらない。いつまでも、ゆっくりと静かな時間が過ぎていきました。
・・・そして、地鉈温泉へ行くときには飲料水の持参を強くオススメします。「せっかく来たから」とか「出ると寒いから」と思って、ついつい長湯をしてしまうとすっかりノボせてしまいます(しまいました)。来るときに降りた階段をまた登って帰るのが、なかなか大変でした。
では、ボチボチと宿に戻ってクリスタルボウル演奏の1回目を始めようと思います。
別行動をしていた人たちも宿に集まって来ました。かなりゆっくり過ごしていたけど、時計はまだ15時前。夜の船で島を訪れると、時間をたっぷり使えるのがうれしいです。
ボウルを部屋に並べ、各自、毛布や布団を押し入れから取り出します。ヨガスタジオで開催するのと違って、本当にゴロゴロしながら聞ける贅沢な時間。外に聞こえるのは鶯の声や虻の羽音だけ。さぁ、ゆっくりと演奏スタートです。
(今回、あえて録音していません)
船旅の疲れのせいか、島旅のリラックス効果のせいか、はたまた布団のせいか、皆さんとてもリラックスして眠りに入ったため、演奏終了後にかなり長い静かな時間を入れました。
その間、こっそりとキッチンへ移動してご飯の準備。炊飯器にスイッチを入れ、式根島名産の魚のつみれ「たたき」と採ってきたばかりのアシタバを入れたお味噌汁を作りました。
「なにかいい匂いがするー」と目覚めてきたのは16時半ごろ。お茶を飲んで一休みします。
「村の人からタラの芽がたくさん生えている場所を教えてもらったから採りに行かない?」
なんと!春の高級食材タラの芽!こういうのが島の醍醐味ですよね。ここで、メンバーはタラの芽採集に出かける人、さらなる豪華なオカズを目指して釣りに出かける人、もう少し眠っておく人の3グループに別れて行動開始。
繰り返しになりますが、式根島は歩いて回れる小さな島なので、レンタカーで回るのと違って気ままに行動できるのが本当によいです。
私はタラの芽チーム。タラの芽はうるしとも似ているから、しっかりとトゲトゲがあることを確認しつつ、探して回ります。
気がつけばちょうど夕日の時間。真っ赤な夕日を追いかけながら海岸沿いへ降りていくと、島の人たちも同じように夕日を眺めていました。
静かの海。湾になっているから、波も本当に穏やかです。夏には泳ぎに来たいなーなんて考えつつ、ゆっくりと帰路に着きました。頭の上には星がちらほらと。
宿に到着し、夕食のメインディッシュである天ぷらの準備に取りかかります。アシタバは軽く素揚げ風に、「たたき」の揚げはしっかりと熱を通して。アシタバとツナとオリーブの和え物も副菜として作りました。
釣果の方はどうだったかというと、時間的に少し難しかったらしく、それでもピチピチのカワハギが2匹。ついさっきまで泳いでいた魚が、見事な包丁さばきでどんどん「刺身」に変わっていきました。
ご飯、カワハギのお刺身(新鮮なキモを使った「キモ醤油」でどうぞ)、アシタバとタラの芽の天ぷら、たたき揚げ、たたきとアシタバのお味噌汁、磯のり。
ほとんどが島の食材、ついさっき採ってきたものばかり。豊かな島に感謝しつつ、満腹になりました。カワハギおいしかった!
食後に一休みしつつ、希望者だけで島の銭湯「島の湯」へ行くことに。式根島は露天風呂が24時間沸き続けているけど、どこも大自然の中で男女混浴なので、水着の着用が義務づけられ、石鹸類の使用は禁止されています。この「島の湯」は温泉を汲み上げて作った銭湯。男女別に浴槽が作られているので、裸で入って石鹸やシャンプーを使うことも可能です。
島の湯までの道のりは満天の星空でした。そっか、僕らの頭上にはいつもこんな星があったんだ。暗やみの中で星を眺めていると、闇の中に自分が吸い込まれて宇宙と一体になるようで、僕はもうあのさそりのように、本当にみんなの幸せのためならば、僕の体なんか百ぺん灼いても構わない、本当の幸いはこんなことかもしれない。そんなことを思いました。
島の湯でしっかり温まり、再び星空の下を歩いて宿へ戻ります。朝から行動していたのに、気がつけばもう22時でした。
それでは、お泊まりスタイルのクリスタルボウルイベント最大の楽しみである「布団に入りながら演奏を聴いて朝まで眠れる」時間のスタートです!おやすみなさい。
(こちらも、あえて録音していません)
3月22日(日)
ぐっすり眠りました・・・。昨夜は暗い中で演奏しつつ、ひとつずつボウルを片付けて(寝起きで蹴飛ばしたりしないようにね)、自分自身も演奏が終わったらそのまま布団の中へ。
ふだんはなかなか安眠できていないことが多いのだけど、かなりぐっすり眠りました。夢をたくさん見て、夢の中で子供のころの友人たちと再会しました(実際はもう10年以上会っていません)。最近の友人には申し訳ないけど、夢に出てくるのは子供のころの人たちばかりです。たまに、もうオトナなのにドラえもんと旅する夢を見たりするのはどうかと思いつつ、その時代の記憶って濃いんだなー、大切だなーと感じています。願わくば次世代の子供たちにも平穏な毎日を。
今日の11時過ぎには式根島港から東京へ向けて帰らないとです。残りの時間、私はボケーっと過ごすことにしました。路肩に座って、こんなことを考えながら。
鶯の鳴き声
虻の羽音
時折通る 工事車両
いま こうしている瞬間も
温泉は沸き続け
アシタバが芽吹き
タラの芽は伸び始めている
なにも足さず
なにも引かない時間
あるがままの時間において
人もまた 風景のひとつになった
私はそれを とても心地よく感じ
そんな時間を過ごせることに とても感謝していた
私がいつか あなたの風景になったとき
心地よいと感じてもらえますように
・・・時間が来たので、港へ向かうことにします。今日はまるで真夏のまなざし。真っ青な空に白い入道雲、照りつける太陽は皮膚が何かを感じ取る器官であることを思い出させました。
帰りの船は昼間に運行しているため、あえて言うなら「昼寝くらいしかやることがない」時間です。まぁ、本を読んだり仕事をしたり電話したりメールしたりしててもよいのだけど、船の中だし、あえて繰り返すなら「昼寝くらいしかやることがない」時間です。
でも、そんなのも大事だと思っています。早けりゃいいってもんじゃない、やることがあればいいってもんじゃない。身にしみさせる時間、ボウルの演奏でいえば「間」の時間だったり、演奏後の静かな時間だったり。
8年ぶりに開催した式根島リトリート。いろいろギリギリな感じもあって参加者の皆様に心配をかけたり、ドタバタやワタワタしたけれど、反省ふまえて次のステップへ進みたいと思います。
私がいつか あなたの風景になったとき、心地よいと感じてもらえますように。
ご参加いただきました皆様、お疲れさまでした&ありがとうございました。