絶対音でも和音が濁るクリスタルボウルの難しさについて

クリスタルボウルのレッスンにご参加いただいた方から、こんな質問をいただきました。

「絶対音にこだわりながらボウルを揃えたのに、なぜか和音がアンバランスに聞こえる気がするんです・・・」

非常に長くて難しいお話なのでブログで丁寧に紹介します。

クリスタルボウルのピッチのズレについて

クリスタルボウルにはひとつずつ「ドレミファソラシ」の音階があります。半音(#)も含めて、1オクターブで12個の音ですね。複数のボウル(=複数の音階)を同時に鳴らすと「ドミソ」や「レファラ」といった和音を作ることができます。

ただし、クリスタルボウルは製造時・製造後に細かく音を調整することができないので、同じ「ド」のボウルでも微妙な音のズレを持っています。ピアノだと調律師さんに調律してもらったり、ギターだと弦の張りでチューニングできますが、ボウルにはそういった機構がありません。

そのズレを「ピッチ」と呼び、「セント」という単位の数値で表し、ピッチが±で100セント変わると半音変わります。

ここまでのまとめです。

  1. クリスタルボウルにはひとつずつドレミの音階がある
  2. でも、細かく調整ができないために微妙にズレていることがある
  3. ズレを「ピッチ」と呼び、セントという単位の数値で表している(±100セントで半音変わる)

「これはB(シ)のボウルです!」と言われても、「B -45」だと、半音下の「A#(ラ#)」に近く聞こえるし、「B +45」だと半音上の「C(ド)」に近く聞こえます(B +60というような表記はしません。その場合はC -40になります)。「B」という音階の表記であっても、ピッチのズレによっては耳に聞こえる音はすっっっごく変わって聞こえるのです。

ピッチのズレの聞き比べ

実際の音で聞いてみましょう。どちらも同じ8インチのサイズです(音量にご注意ください)。

まず、こちらが「B -45」です↓

 

そして、こちらが「B +45」です↓

 

音の高さがかなり違って聞こえませんか? でも、クリスタルボウルの世界ではどちらも「Bのボウル」として販売されるものです。そのため、ピッチの数値を考慮せずに音階(ドレミファソラシ)だけを見てボウルを揃えてしまうと、実際に鳴らしたときの音がバラバラで、和音がキレイに響かない恐れがあります。

絶対音のクリスタルボウルについて

繰り返しとなりますが、クリスタルボウルには音階がありつつ、細かな調整をすることができないために微妙に音がズレていることがあります。そのズレの大きさは「ピッチのズレ」として「セント」の単位で表記されています。

そして、もちろん「ものすごく厳密にドレミファソラシの音階に合ったボウル」というのも存在します。

こちらは「B -5」です↓

 

「B -5」は「厳密なB」から5だけズレている音なので、B +45やB ー45に比べると音のズレ幅が小さいと言えます。このように、ピッチのズレが±10以内のクリスタルボウルを「絶対音」や「トゥルーピッチ」「トゥルートーン」と呼ぶことがあります。

クリスタルボウルの和音について

再びおさらいです。

クリスタルボウルにはピッチのズレという音の微妙なズレがあります。ピッチのズレが小さいものは「絶対音のクリスタルボウル」のように呼ばれることがあります。

この言葉だけ聞くと、「絶対音はズレが小さくて優れた(よい)ボウル」のような印象を受けるかもしれません。そして、ズレの少ない絶対音のクリスタルボウルだけで揃えていけば複数を同時にならしたときの和音がキレイになりそうに思えるかもしれません。

でも、実際はそう簡単にはいきません・・・。

絶対音のボウルであっても、絶対音とされる許容範囲は±10です。つまり、最大で20のズレがあります。

20違うとどのくらい違って聞こえるかというと、こちらが「D -10」という絶対音のクリスタルボウルです↓

 

そして、こちらが「D +10」という絶対音のクリスタルボウルです↓

 

20違うと、ちょっと違って聞こえませんか? 絶対音ってワリと緩いルールなのです。

平均律の難しさ

さらに非常に難しいお話として、クリスタルボウルの音階を決めている「平均律」ではすべてのピッチを完全に一致させたら和音が濁ります(!)。誤解を恐れずに言えば、和音の美しさを追求したいならピッチが完全に一致していたらダメということです。

たとえば、「ドミソ(C・E・G)」の和音をキレイに作りたいとき。「C ±0」のボウルと本当に響き合う「E」の音(3度の音)は「E ±0」ではなく「E -14」、「G」の音(5度の音)は「G ±0」ではなく「G +2」となります。これは「純正律」という考え方です。

 

絶対音で揃えるより、それぞれのピッチを考慮して純正律になるように揃えた方が和音は確実にキレイです。

「C ー10」に「E +10」と「G +10」ならすべてが絶対音なのでドミソの和音がキレイになりそうですが、実は「C +30」と「E +16」と「G +32」の方が(それぞれは絶対音ではないけれど)周波数の比率が美しく、和音がキレイになります。難しいですね!

試聴をしましょう

クリスタルボウルを選ぶのは本当に難しいです。

「絶対音だから大丈夫」とか「ピッチの数値が同じだから大丈夫」というような考えだけでは、絶対音の許容範囲の要素とか、平均律の要素とかで、期待通りにいかないかもしれません。

複数のクリスタルボウルを揃えたいときは、信頼できる販売店が「セット組」にしているボウルをインターネットで試聴してから購入したり、ひとつずつ増やしたいときは自分のボウルを慣らしながらインターネットで試聴をして、必ず音の響きを確認しましょう。

クリスタルボウル サウンド・バスSHOP」でも、たくさんのセット組を掲載しています。

ぜひ、あなただけの美しい音を見つけてみてください。

選び方については書籍でも紹介しています。

おまけの注意喚起です

メルカリやアマゾンなどでクリスタルボウルのフルセット(7音セット)が売られていることがあります。フルセットなら7つの音がいきなり揃うから演奏しやすいはず♪ と思いきや・・・

個々のピッチの数値も分からず、試聴もできないままに買ってしまうと、ぜんぜんキレイなハーモニーじゃなかったときに、なまじっか7つもあるので追加購入や買い換えが困難になると思います。

ピッチも分からず試聴できないクリスタルボウルの購入は、個人的にはオススメしません。フルセットなんて(きちんと響き合うことまで考慮していたら)そんなにヒョイヒョイ完成するものじゃないと思います。私のざっくりな感覚だと、100個のボウルがあっても、作れるセット(フルセットではなく、3つ4つのセット)はせいぜい5セットくらい、フルセットは半年にひとつ完成するかどうか・・・です。

信頼できる販売店・販売者からのセット購入が一番よいと思います。私もその期待に応えるべく、あれやこれやと悩みながらセットを作っています。

Magali Luhan

水晶から作られた楽器「クリスタルボウル」を使い、心地よい音色で心身に変化をもたらすサウンド・バス アーティスト。東京・浅草橋「studio PLAYA」運営、Crystal Sound Laboratory代表。

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