クリスタルボウルの演奏会で「奏者の方も癒やされるものですか?」と質問をいただくことがあります。今日はそんな話です。
結論から書くと、「寝転がって聞いている人ほどではないけど、肉体的には活性化する」という感じです。
クリスタルボウルの体験を大ざっぱに書くと、
- 音圧でカラダがほぐれていき、眠りがよくなったりご飯がおいしく感じられる
- 音響でココロがほぐれていき、深い瞑想状態や閃きを得ることができる
- カラダとココロがほぐれた結果、ぐーすか眠ってしまう
というものがあります。
まず、「音圧」は奏者も聴者も同じように音を浴びています。奏者の方がボウルとの距離が近いので音圧も強そうですが、寝転がった体勢ではないので、全身で受け止められるという点では聴者の方がしっかり体験できます。
「音響」は難しいところがあります。いつも即興で演奏をしているとはいえ、奏者は「意識」をしっかり保ったままでないと危険を招いてしまうことがあります。
以前、完璧な暗やみで演奏していたときに、一切なにも見えない中で一瞬「演奏している音に持って行かれた」ことがあります。自分の意識が消えて、完全に音と一体化し、音出しロボットみたいになっていました。「音と一体化できるならいいんじゃない?」と思われるかもしれませんが、聴者(お客さん)を目の前にして演奏しているときには、そうはいきません。
奏者は常に聴者の状態を観察し、too muchになっていないか、部屋の温度や外部ノイズは不快ではないか、どのくらいまでクリスタルボウルの音を続けて大丈夫なのか、常に意識を尖らせています(これができないと、ただの自分勝手な演奏です)。
ボウルを鳴らすことって簡単なんです。だけどそこで、音を鳴らすのが楽しいから・音が鳴っていないと不安だからと、ガンガン鳴らしてしまうと聞いている方にはダメージになることがあります。
クリスタルボウルは癒やしの楽器ではありません。鳴らせば癒やされるなんて単純なものなら、人間はどこまでも堕落してしまうでしょう。クリスタルボウルはイマジネーションを拡げられるツールです。だから、危険もたくさんあります。
なので、奏者のココロはそれほどほぐれません。同様に「ぐーすか眠る」ということも(演奏中は)ありません。
そのかわり、クリスタルボウルを演奏している1時間程度を「誰かのためだけに使っている」ということと、ものすごい集中力を使うのは、奏者のココロに取って大変有益だと思います。
常に情報が行き交う現代の生活において、高度にネットワーク化された都会の生活において、誰かのためだけに集中した時間を作ることは困難になっています。たとえば、いまこうやって文字を書いている最中にもメールが届いてきますし、この文字を誰がどういう状態で、気持ちで読んでくれているのかは分かりません。
だけど、ボウルをやっているときはすごくシンプルです。それが心地よいです。
ずいぶん長くなってしまいましたが・・・
聴者(お客さん)を前にしている演奏のときは、意識を常に尖らせているので「癒やされる」という感覚ではありません。心地よい時間です。音圧はしっかり浴びているので、眠りがよくなったりご飯がおいしかったりという効果は得られます。
では、自分向けに演奏するセルフヒーリングとしてはどうかと考えると、雑念を消して集中力を高めたいときなどにはよいと思います。ただしこちらも、演奏者はやっぱり演奏している人間なので、「癒やされる」とか「疲れが取れる」という感覚はないと思います。
「会社から疲れて帰ってきたら、演奏するより寝たいよね」なんてことを笑いながら話していたこともあります。
なので、クリスタルボウルをセルフ・ヒーリング用に取り入れようとしている人は、うーん、ちょっと難しいかもしれません。セルフマッサージと、誰かからやってもらうマッサージの違いというか、やっぱり、聞いてくれている人あっての楽器だと感じます。頻繁に聞きたいときは、仲良しの奏者を見つけた方がよいです。
自分の中で「特別な時間」というのを作っておくと、いろんな場面で役に立ちます。私のクリスタルボウルイベントが、そんな存在になってもらえるように努力を続けています。
・・・私が1時間演奏するから、1時間マッサージしてくれるなどのご提案お待ちしております。クリスタルボウルの運搬や演奏はかなりの肉体労働なのです・・・。