クリスタルボウルのイベントにご参加いただいた方から「この楽器はどこの発祥ですか?」という質問をいただくことがあります。今日はクリスタルボウルの発祥についてのお話です。
クリスタルボウルの発祥
まず、クリスタルボウルのようなお椀型をした楽器は古くから東洋の世界で発祥しました。
仏壇の前に置いてある金色の「おりん」や、お寺の和尚さんが鳴らす黒くて大きな磬子(きんす)、ひっくり返せば除夜の鐘、ヨガスタジオでも見かける金色の「チベタンボウル」など、素材や大きさは異なれど、形状や奏法、音色はクリスタルボウルとよく似ています。
これらのお椀型の楽器は宗教儀式や瞑想で用いられてきました。除夜の鐘を聞くと年末だな・・・という気持ちになり、仏壇のおりんを鳴らすと手を合わせたくなりますよね。
そして、その歴史とはまったく関係がないところで「石英るつぼ」という巨大な「鍋」のようなものが20世紀初頭に開発されました。
石英るつぼは金属や粘土ではなく、水晶を高温で溶かして製造しています。どうしてわざわざ水晶で作っているかと言うと、水晶は高温に耐えることができ、化学的な特性も強いために各種の製造や実験・培養に非常に便利だったからです。
石英るつぼは現在でも世界中で利用されています。
さらにそこから時代が進み・・・1980年代のアメリカで、石英るつぼを叩いたらすごい音が鳴ることに気づいた人たちがいました。そういえば石英るつぼは形状が東洋のおりんにも似ています。
これはヒーリング楽器として使えるのではないかと注目され、1989年にイタリア人のAwahoshi Kavanがサウンドヒーリングとしての手法を体系立てたのが、いわゆるヒーリング楽器としてのクリスタルボウルの発祥です。
その後、クリスタルボウルもさまざまな進化を遂げ、サウンドヒーリングとしての手法もさまざまなものが誕生しました。
元祖・クリスタルボウルは現在では「フロストボウル」や「クラシック フロステッドボウル」と呼ばれています。見た目は「石英るつぼ」」そっくりですよね。
その次に「クリアーライトボウル」という薄くて軽いボウルが誕生しました。まさに水晶そのままな透明な見た目です。
ちょっと余談になりますが、フロストボウルも(クリアーライトボウルと同じく)水晶だけで作られています。でも、フロストボウルは白色でクリアーライトボウルは透明ですよね。
これは、フロストボウルには「溶かしきらない白色の水晶の粉」を外側に貼り付けて、内側に透明層・外側に気泡層という複層構造にすることで鍋としての保温性を高めているからです。フライパンのテフロン加工のようなイメージです。
もちろん、楽器として使うときには保温性は音色に関係がないためにクリアーライトボウル以降のボウルはそういった加工はされていません。フロストボウルが誕生したときは石英るつぼをそのまま転用していたので「クリスタルボウルは白色なのだ」というイメージが残っていたのでしょう。
その後は(水晶だけで作られていた)クリアーライトボウルにさまざまな鉱石をMIXしたカラフルな「アルケミーボウル」というボウルが誕生しました。
クリスタルボウルの種類や選び方については書籍でもまとめていますので「ボウルが欲しい!」というときには参考にしていただければ幸いです。
クリスタルボウルの発祥から思うこと
クリスタルボウルは東洋に伝わる古代からの叡智と、西洋で開発された現代のテクノロジーの融合によって生まれたと言ってよいかもしれません。
※クリスタルボウルはアーク放電という装置を用いて高熱でクリスタルを溶かして成形しています。水晶製のドクロのように「研磨」して作ったものとは異なります
そして、非常に重要な部分として「クリスタルボウルはまだ数十年の歴史しかない」ということ。
ヨガは発祥が数千年前と言われています。ピアノやバイオリンは数百年の歴史があります。クリスタルボウルは数十年です。
まだまだクリスタルボウルのサウンドヒーリングは細かなジャンル分けがされていません。いまはそれぞれの奏者が自分の理想を目指して自由に活動をしている時代です。
そのため、奏者によって選ぶボウルの種類も、鳴らす音色も、演奏の雰囲気もすごく違っています。「クリスタルボウルがなぜ心身に影響を与えるのか」というような考え方にもさまざまなものがあります。
私は「サウンド・バス」と呼ばれる、さまざまな楽器が生み出す響きに心身を委ね、やさしく耳を澄ませながら音を聴くことで深いリラクゼーションや瞑想的な意識にアプローチをする手法を取り入れて演奏をしていますが、ほかの奏者さんだともっとスピリチュアルな要素が強かったり、ただ感じるまま・思うがままに演奏をするのを大切にしている奏者さんもおられます。
奏者によって本当に違いますので、ぜひいろいろな演奏・奏者に触れて自分の好みに合うものを探してみてください。
クリスタルボウルの発祥はごく最近のことでした。ここから、長い歴史が作られていくことを期待しています。